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【腸内細菌ちょこっと話】辨野先生の研究など

※今回は、昔から取り溜めていた腸内細菌関連のフォルダを紐解いて投稿してゆこうと思います。辨野先生の研究から・・・・。赤嶺福海

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見えていたのは全体の3割だった

19世紀半ば、ウィーン大学のTheodorvon Escherich エシェリッヒ はふん便中に細菌を発見した。大腸菌である。ただし20世紀半ばまで、ふん便から大腸菌以外の細菌はほとんど培養できず、多くの細菌は腸内で死んだ状態だと考えられていた。

 

その長年の常識を打ち破ったのが、理研の光岡知足博士らである。

 

1950年代から、光岡博士らは無酸素状態の嫌気性培養を行うことによって、腸内で多くの細菌が生きていることを解明し始めた。ほとんどの腸内細菌は、酸素があると生育できない嫌気性細菌だったのだ。

 

約30年前、理研の光岡研究室に入った辨野室長は、「青春時代、腸内細菌とともに過ごしました」と語る。「細菌の種類によって繁殖条件が異なります。寒天培地を試行錯誤して作り、細菌を1つ1つ数えて種類と数を記録する“職人芸の世界”です。とても根気と体力が必要で、しかも試料のふん便や培地は臭く、細菌感染の危険性もある。誰もやりたがらない研究テーマです。

 

光岡先生は“こんな仕事をやるのはばかだよ”と私たちに言っていましたね(笑)」

 

光岡博士は、独自の培養技術を駆使して腸内細菌を系統的に研究した業績により、1988年に日本学士院賞を受賞した。「これで腸内細菌のことは分かった、光岡先生の仕事は完成した、と皆さん思っていたのです」。

 

しかし、辨野室長は、「今の培養法で、果たして腸内細菌全体を調べ切れているのだろうか」という疑問をずっと振り払えなかったという。1980年代半ばから、腸内細菌のDNA解析が可能になり始めた。培養しないでも腸内細菌の存在を調べられるようになったのだ。

 

そして1996年、分子生物学者による“衝撃の論文”を辨野室長は目にした。ヒトのふん便から細菌のDNAを抽出して解析したところ、“10~25%は培養可能だが、残る75%は培養困難、不可能な菌である”というのだ。これまで約100種類といわれていた腸内細菌は、500種類以上あることも明らかになった。

 

多くの研究者によって研究開発された培養法によってほぼ解明されたと思われていたものは、腸内細菌の約3割にしかすぎなかったのだ。

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腸内細菌の全体像をつかむ

1998年、辨野室長は研究の方向を大きくシフトさせた。従来の培養法をベースにDNA解析の手法を取り入れ、“培養困難、不可能な菌”とされたものを含む腸内細菌の全体像の解明に挑み始めたのだ。まず健康な日本人3名のふん便から744の細菌DNAクローンを取り出して解析した。するとその75%が今まで発見されていない腸内細菌だった。さらに腸内細菌の構成は個人差が非常に大きいことが分かった。

 

そこで辨野室長は、ヒトの腸内細菌全体の構成パターンをより迅速・簡便に調べられるT-RFLP(Terminal RestrictionFragment Length Polymorphism)法を2000年ごろから導入し始めた。T-RFLP法は、まずふん便中のさまざまな腸内細菌から特定のDNA(16SリボソームRNA遺伝子)を取り出す。DNA合成の始点になる分子(プライマー)に蛍光色素を付けて増幅した後、2種類の制限酵素で切断する。DNAには4種類の塩基が並んでいる。制限酵素は特定の塩基の並びでDNAを切断する。切断されたDNA断片はさまざまな長さ(塩基数)になる。

 

それぞれのDNA断片の量を蛍光の強さとして測る。それを塩基数の順に並べてみると、腸内細菌全体の種とその量の構成パターンを反映した「腸内細菌プロファイル」が見えてくる。


腸内細菌と病気の関係を探る

そもそも腸内細菌がすむ大腸は、ヒトの体の中で最も病気の種類が多い“病気腸内細菌の全体像をつかみ、予防医学に役立てる

誰もが腸内細菌を検査して健康や治療に役立てる日がすぐそこに来ています。ヒトの体には、500種類以上の腸内細菌がすみついている。腸内細菌の一部はふん便とともに排出される。その細菌数は、乾燥ふん便1g当たり1兆個近く。腸内細菌の全重量は約1.5kgと推定される。その腸内細菌の全体像が微生物機能解析室の辨野義己室長らによって解明され始めた。

 

腸内細菌は、消化器系の病気だけでなく、現代の3大死因である、がん、心疾患、脳血管疾患、さらにはアレルギーや痴呆など多くの病気と関係していることが近年明らかになりつつある。辨野室長らは、食生活などの生活習慣や年代で変化する、一人ひとりの腸内細菌の全体像をつかみ、予防医学に役立てることを目指している。

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腸管は外界と接する“免疫の最前線”でもある

ある種の腸内細菌はアンモニア硫化水素などの腐敗産物、細菌毒素、発がん物質を産出する。これらの有害物質は腸管に障害を与えて、大腸がんやさまざまな大腸疾患を引き起こす。また一部の有害物質は吸収されて血液を介して全身を回り、各種臓器に障害を与える。こうして腸内細菌は、発がんや老化、コレステロール沈着による動脈硬化、肝臓障害、痴呆、自己免疫病、免疫低下などの原因となっている可能性が高いことが分かりつつある。

 

例えば、痴呆症老人のふん便にはクロストリジウムが多く、これらの菌によって産出される有害物質が全身に広がると、神経伝達物質などの働きを阻害して脳の機能を低下させると考えられる。また最近の分子生物学的研究によると、腸内細菌が作り出す有害物質が、コレステロールの血管への沈着を促進して動脈硬化を引き起こし、心疾患や脳血管疾患の原因となっている可能性がある。

 

さらに腸内細菌は胆汁酸を変換して二次胆汁酸を作り、大腸がんの発症を促進していることも明らかにされている。現在、二次胆汁酸を作る細菌が6種類発見されており、うち3種類は微生物機能解析室が解明したものだ。

 

動物実験によると、無菌状態の動物は、通常より1.5倍長生きします。私たちの寿命は体内の細菌によってコントロールされていると言ってもよいのです」

腸内環境データベースを作る

このように腸内細菌と病気の関係が明らかになってきたが、腸内細菌の研究を発展させ、実際の予防医学などに役立てるには、従来の研究のあり方を大きく変える必要があると辨野室長は指摘する。「これまでは主に培養できるものを対象に、ある病気のときにどの菌が増えたとか、減ったとかを調べていましたが、なかなか成果が得られませんでした。


これからは腸内細菌全体が集団として、私たちの体や食べ物とどう相互作用し、どういう物質を産出するのかを調べる必要があります。

まず、腸内細菌全体の構成をとらえる腸内細菌プロファイルと腸内細菌全体の産出物(代謝物)の構成をとらえる腸内代謝プロファイルを合わせた、腸内環境データベースを作ります。

 

そして食生活などの生活習慣や病状などのデータも蓄積して関連性を解析すれば、どのような腸内環境が健康な状態か、どの腸内環境が特定の病気と関連するかが明らかになるでしょう。そうすれば腸内環境データを予防や病気の早期発見に役立てることができます」

腸内細菌のデータベース作りは、ヒトゲノムの解読に貢献した米国のaigenter 博士らもいち早く着手している。しかしVenter博士らは培養可能な菌のみを対象としている。

1996年に“衝撃の論文”を発表した分子生物学者のグループも、その後、腸内細菌の研究を発展させることができなかった。辨野室長が率いる微生物機能解析室は、腸内細菌の全体像を解明し、予防医学に結び付ける研究で世界をリードする存在となっている。

 

腸内環境は一人ひとりで違い、同じ人でも食生活などの生活習慣や年齢とともに変化する。腸内環境データベースを作るには幅広い地域や年齢層で試料を集め、大量・迅速に解析することが必要だ。

 

辨野室長は全国から十万人規模の試料を得るルートを開拓しようとしている。「従来の培養法では、どんなに努力しても研究者1人が1年に200人分の腸内細菌を調べるのが限度でした。T-RFLP法のような分子生物学的な解析法を使えば、全過程を自動化することができます。

理研の技術力を駆使して装置の改良を進めれば、2~3年で十万人規模の試料を解析できるでしょう。T-RFLP法を紹介し始めたら、大学の医学部や病院との共同研究の輪も大きく広がりました」

 

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生活習慣と腸内細菌、病気との関連を解明するには、特定の地域を集中的に調べることも重要である。例えば、弘前大学と共同で青森県内のある地域の住民3000名以上を対象に、腸内細菌を毎年検査して、その人が5年後、10年後にどういう健康状態になるか、関連を調べる予定である。青森県は男女とも“長寿ワースト1位”であり、大腸がんの高リスク地域の一つになっている。

 

「近年、若い人を含め大腸がんの発症数が全国的にも増加傾向にあります。どういう腸内細菌パターンが大腸がんにかかりやすいのかが分かれば、予防や早期発見を国家レベルで行い、医療費も大幅に減額できます。大腸がんは最も医療費のかかる病気の一つです」

 

腸内細菌を調べることで、個人に合った薬を選ぶオーダーメイド医療も可能になると辨野室長は言う。「例えば抗生物質の投与では下痢の副作用が問題です。腸内細菌を調べて、その人が下痢を起こしにくい抗生物質を選ぶことができるようになるでしょう。漢方薬なども腸内細菌を調べることで、その人にとって最も効果的な処方を決めることができます。腸内細菌が出す酵素が、漢方薬の薬効成分を活性化させることが多いのです」


ヒトの体にすみついている細菌は腸内細菌以外にも、口腔こうくう内や膣内にそれぞれ約500種類と推定されている。皮膚にも多数の細菌がいる。「現在、口腔内細菌のうち、単離されているものは10%にしかすぎません。口腔内細菌の全体像をT-RFLP法で調べ、歯周病の治療や予防に役立てる共同研究も進めています」

 

今後は、理研内部での連携も深めたいと辨野室長は語る。「例えば、理研横浜研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターと、腸内細菌とアレルギーの関係を探る共同研究を行ってみたいですね」

腸内細菌で医と食を結ぶ

例えば、食中毒を起こす腸管出血性大腸菌O-157サルモネラ菌の感染を受けても、発症する人と、しない人がいる。「その病原菌に対抗する腸内細菌を持っているかどうかの違いです。では、どういう腸内細菌パターンを持てばよいのか。それには、どういう食生活に改めるべきか。最寄りの病院で腸内細菌検査を行い、アドバイスを受ける日がすぐそこに来ています」と辨野室長は言う。

 

医食同源という言葉がありますが、医と食の間にあった扉が、腸内細菌を通じて初めて開かれるのです」腸内細菌の研究の進展とともに、健康に有益な効果をもたらす各種の乳酸菌の機能解明も進み、それらを取り込んだ機能性食品であるプロバイオティクスがブームとなっている。「プロバイオティクスは、“抗生物質=アンチバイオティクス”の反対概念として生まれました。

 

抗生物質は病原菌ばかりでなく、有益な働きをする細菌まで皆殺しにします。それに対して、健康増進効果を示す微生物の働きを利用しようというのがプロバイオティクスの考え方です」プロバイオティクスの典型は「特定保健用食品」の表示がある発酵乳やヨーグルトだ。特定保健用食品とは、1991年に日本が世界に先駆けて導入した制度で、医学的あるいは栄養学的な研究成果に基づいて、保健効果が期待できる食品には、機能表示を国が許可するものだ。

 

乳酸菌を利用した特定保健用食品の健康強調表示(Health Claim)は、整腸作用のみであるが、将来は、免疫活性によるがんのリスク低減、アトピー性皮膚炎の予防、血糖値や血圧・コレステロール抑制、胃潰瘍かいようの予防・改善、歯周病などの原因菌抑制などに展開する可能性も出てきている。

 

特定保健用食品のブームは、腸内細菌の全体像の解明とともに、乳酸菌などの機能が明らかになってきたことから起きたもので、一時的な流行ではありません」と辨野室長は評価する一方で、最近のブームは行き過ぎの部分もあると警告を発する。

特定保健用食品を、薬のように考えている人が多すぎます」

食を含めた生活習慣全体を改善して、腸内細菌全体のバランスを変え、健康の増進と病気の予防を実現していくことが大切なのだ。辨野室長はその実践者である。「人には勧めておきながら、実は野菜やヨーグルトが苦手でした。しかし3年前から生活を改めました。朝、手足に計7kgの重りをつけて1時間散歩します。食事は野菜中心へ切り替え、ヨーグルトも1日に500g食べています。こうして体脂肪は28%から22%へ落ち、年来患ってきた花粉症や痛風も改善しました」

腸内細菌研究を健康に結び付ける

「私は30年間、腸内細菌の研究をしてきましたが、この3年間で腸内細菌の研究は大きく様変わりしました。私たちが様変わりさせたと言っても過言ではありません」。分子生物学的手法を導入して以降、微生物機能解析室には食品企業などから委託研究生が多数集まるようになった。「私が若い人によく言うのは、“DNAを見ただけでは細菌のことは分からない。

 

生きた細菌を見ることによって初めてDNAの機能も分かるのだ”ということです。私は微生物学者ですから“培養不可能”という言葉は使いません。どんな菌も将来は必ず培養できます」と語る辨野室長は、最後にこう結んだ。

 

「培養を必死にやってきた50年以上の歴史があるからこそ、今日があるのだと思います。培養法ではできなかった研究を、分子生物学的な手法を取り入れて再構築しているのです。20世紀の腸内細菌研究は、“研究のための研究”でしたが、やっと予防医学に役立てるときが来ました。これまでの多くの研究者の努力を、人の健康に実質的に結び付ける橋渡しをしていきたいと思っています」

 

監修 中央研究所 微生物機能解析室
室長 辨野義己

 

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